アシェットデセール、という言葉をご存知でしょうか。フランス語でアシェットは「皿」、デセールは「デザート」。つまり皿盛りのデザートをさします。
レストランでコース料理を頂く際、コースの最後を締めくくるデザートは重要な役どころ。最大の魅力は、いままさに出来立てのデザートを体験できることでしょう。最近、このアシェットデセールを提供する専門店、あるいはパティスリーが増えつつあります。
とはいえ、地方都市ではまだまだ本格的なアシェットデセールに巡り合う機会はなかなかないもの。そんな中、北上市のパティスリー「アトリエkuko」(アトリエクーコ)にて素晴らしいアシェットデセールに出会いました。
ピーチメルバ

1892年、ロンドンはサヴォイホテルの料理長であったエスコフィエが、オーストラリアのオペラ歌手「ネリー・メルバ」に捧げた「ピーチメルバ」。その名の通り桃を使ったデザートです。
まずは金の飴細工を纏ったその美しさに思わずため息。桃のジュレにそっと浮かぶ瑞々しい果実がこちらを誘います。お好みで、と添えられたラズベリーソースを掛ければ薄紅のジュレは艶やかな深紅へ。なんて美しいデザートでしょう。

桃のコンポートに使われているのは大迫(花巻市)のエーデルワイン。しっとりと甘い香りに包まれた桃はフレッシュな味わいはそのままに、芳醇な香りと甘みをあふれさせます。おいしい!
桃の中心部はバニラアイス。桃とバニラの甘い香りをラズベリーソースの甘酸っぱさが引き立てています。その下には紅茶のメレンゲ。シャコっと小気味よい軽やかさを備えたメレンゲは、パキン、とした飴と共に、とろけるようなピーチメルバのアクセントに。

そして、甘酸っぱいラズベリーソースと混ざり合うジュレ。桃とバニラアイスごと、とろりとすくえば、官能的ともいえる魅惑のひと時が訪れます。食べ終わってしまうのが惜しくて、ひと匙ひと匙ゆっくりと頂きました。

桃の魅力を最大限に引き出すシンプルな構成が何より良いですね。繊細で美しく、夢のようにおいしい本格的なアシェットデセール。ゆったりとしたサロンの雰囲気も合間って、夏の暑さを忘れる素晴らしい一皿でした。8月いっぱいまで提供を予定しているそうですが、桃の入荷状況によっては早めに終わる可能性もあるそう。
アトリエkukoで味わうアシェットデセール「ピーチメルバ」。ぜひ体験して頂きたいと思います。