卵・乳製品・はちみつに至るまで、動物由来の食品を食べない「ヴィーガン」という生き方を選択している人がいます。
日本でも少しずつヴィーガン向けの飲食店が増えているようですが、どうにも味気ない精進料理のようなものを想像してしまい、私自身、心惹かれるものではありませんでした。
ところが、花巻にそれを覆すお店があったのです。
Sobe’s Cafe (ソーベーズ・カフェ)

JR花巻駅より車で6分。国道4号線から少し入った場所にある「Sobe’s Cafe」は、代々の当主が「髙橋惣兵衛」を名乗る稲作農家の次女、畠山さゆりさんが2007年にオープンしたお店。
動物性食材は一切使わず、自家製玄米をはじめとする穀類、地元の野菜、豆、海藻という食材で料理を提供するヴィーガン向けのカフェです。
正直なところ、肉も魚も大好きで、食べるものに制約を設けるなんてもったいないことを…と思う私。ヴィーガン系のお店はほぼスルーだったのですが、Instagramである写真見て驚きました。
季節のパフェ”ストロベリーレアチーズ”

この華やかさ。1台2000円と首都圏並みの高価格パフェですが、大きなパフェグラスに苺やクリームが美しく飾られたこの姿を見ればそれも納得。
ヴィーガン系のスイーツといえば、アサイーヨーグルトなど、なんとなく健康そうだけどいまいちパッとしないという印象でしたが、どこからどうみても贅沢スイーツの趣。出てきた瞬間、わぁ!と歓喜の声を上げてしまいました。
パフェの構成は上から順にこんな感じ。
玄米甘酒スティック
グルテンフリー米粉の焼き菓子
Soyチーズクリーム
サツマイモチップス
すももと梅のジュレ
ラズベリーのシャーベット
苺
Soyチーズクリーム
玄米パフのキャラメリゼ
豆乳ブラマンジェ
4種のベリーソース
旬の苺や自家製のベリーソースと、牛乳の代わりに豆乳を使ったSoyチーズクリームや豆乳ブラマンジェの組み合わせをベースに、ジュレやシャーベットなど盛りだくさん。

なんといってもおいしかったのはSoyチーズクリームと玄米パフ。
豆乳で作ったレアチーズってどんなだろう…と、恐る恐る食べてみたのですが、かすかにほんのり大豆の香りがありつつも、しなやかでコクがあり、それでいてとても軽い。
実はこのパフェ、結構ボリュームがあり、出てきた瞬間、うわ…食べきれるかな…と思ったのですが、スルスル入っていくのです。
最近、年齢とともに乳製品の許容量が減ってしまったのか、おいしく頂いた後で、あっ…なんか胃が重い…という残念な状況に陥りやすかったのですが、豆乳由来のチーズクリームはすっと身体に馴染んで行きました。
そのチーズクリームの中にはとろりとした食感のジュレ。ポリポリとした玄米スティックは香ばしく、冷えた舌をリセットしてくれます。
米粉の焼き菓子はややふわっとした食感で、これはもう少しカリッと焼かれたタイプだったら嬉しいかな。あ、でも一緒に添えられたサツマイモチップスはカリっと香ばしかったです。
ラズベリーのシャーベットは甘酸っぱく、チーズクリームはまろやかに。そして瑞々しい苺という間違いのない流れ。
更に、シャーベットを支えるよう配置されたフローズンベリー…と、さすがに口の中が冷えてきたところに、キャラメリゼされた玄米パフがやってくるのですが、さすが米農家自慢の惣兵衛米。
キャラメルとほんのり甘みをもつライスパフが、さくさくと小気味よい食感と温かみを感じさせます。超おいしいポン菓子。これだけでも山盛り食べたくなるほど!
豆乳ブラマンジェのまろやかな甘さを、ベリーソースがしっかりと引き締め、上から下まで飽きることなく素晴らしいパフェでした!!
どれほど素晴らしいお題目を唱えても、美味しくなければ意味がない。
ヴィーガン系の飲食店にありがちな欠点は、ヴィジュアル、味と共にもう一つ垢ぬけない部分だったり、ヴィーガニズムにこだわり過ぎて、他の選択肢に対し攻撃的な、いわゆる「そういう人のたまり場」になること。
Sobe’s Cafeにはそれがなく、地元民に愛されるカフェであり、また純粋に「おいしい」と思えたので、「ついに日本のヴィーガン・カフェもここまで来たか!」と嬉しく思いました。
また、乳製品や、卵アレルギーなどを持つお子さんにとって、アレルゲンに相当する食材が使われていない、ヴィーガン・スイーツの存在は、一つの希望。
私も久しぶりに胃もたれせず、最後まで楽しくパフェを食べられたので、年齢関係なく家族と一緒に楽しめる、というのも良いな、と。
ヴィーガンというとどうしても思想信条的な方向に走りがちですが、そうではなく、食の選択肢の一つとして、他の料理に並ぶ存在になると良いですね。
余談ですが、こちらのメニュー。前半は日本語ですが、後半はこのように、そっくり同じメニューが英語表記になっています。

花巻空港は地方空港ながら、台北や上海への国際便があり、外国人観光客も訪れます。
今後のインバウンド需要に向け、いち早く多言語でのメニューを用意することで、こうした海外のお客さんにも安心して利用してもらえる取り組みは素敵ですね。
いまは世界的に人の動きが滞っていますが、いずれまた多くの人が行き交うその時に、きっとこうした準備が花開くでしょう。
ヴィーガン・スイーツの楽しさを知り、また一つ、岩手のおいしい、が見つかりました。豊かな自然は、豊かな食を生み出すのですね。
※2020年3月の記事のリライトです