ヴァンサン・ヴァレ/ショコラアムール

チョコレビュー

2015年のワールドチョコレートマスターズにおいて、フランス人として初めて優勝という偉業を果たした「ヴァンサン・ヴァレ(Vincent Vallee)」。ミシュラン1つ星を持つ両親のレストラン「Villa Dilecta」にてペイストリーの世界に魅了された彼が、ティエリー・バマスとピエール・ミルガレットチョコレートの世界で頂点に立ったのは27歳の時でした。

ヴァレ氏自身が一つ一つ手掛けるという、美しいドームキャラメルが人気ですが、オンラインでひときわ目を引いたのが、今回ご紹介するチョコレート、さっそく参りましょう。

ショコラアムール

銀で描かれたカカオポッドとロゴが刻まれた真っい小箱。そっと開けてみると…。

わぉ!カカオニブが敷き詰められた中に、あざやかな真紅のハート。中心には艶々のドームが収められ、これは美しい。光を受けてキラキラと光を放つチョコレート。まるで宝石箱を開けたような感動で胸がいっぱいになります。

さて箱からそっと…う、取り出せない!箱のサイズギリギリのタブレット。さかさまにするとカカオニブがバラバラ零れてしまう。四苦八苦しながら食用ナイフをすき間に入れて、なんとか取り出したのがこちら。

こんな風になっていました。

繊細がゆえにやはり輸送は厳しかったか、ハートの部分とタブレットの一部でやや割れがありましたがこれはもうやむを得ないでしょう。本来なら店頭(本国)で直接買うべき品。よくぞ持って来てくれた、とむしろ感動してしまいました。

見ての通り、言うなればタブレットとボンボンショコラの融合。ハートの薄い器にヴァレ氏の代表作たるドームキャラメルを一粒埋め込み、そのパーツごとチョコレートで固めてニブが散らしてあります。ドームを守るようにハートのケースが乗せられている、実にアーティスティックな一枚。

どこからどうやって食べるかしばし考え、いくつかのパーツに分けて順に味わっていくことにしました。しかしこれほど食べてしまうのがもったいない、と思うチョコレートもなかなかないですね。

まずは曲線が美しい真紅のハートの部分。舌に載せるとスッと消える口どけ。1ミリにも満たない薄い層にビターチョコレートの深い味わいとラズベリーの甘酸っぱさが光ります。

次に美しいドームキャラメル。ハートごとバリッといくのは難易度が高そうでしたので、周りをコンコンとナイフでつついて外し、ぽんと口に放り込む。とろりと流れるキャラメルからは柑橘系の爽やかな香りも感じます。

タブレット部分はサラサラとしたテクスチャ。ほろ苦いビターとありましたが、ココナツ、アプリコット、バニラなどむしろトロピカルで甘やかな印象。たっぷりと乗ったカカオニブが、ザクザクとした食感と程よい酸味で良いアクセントになっています。いや、おいしいですね!

難を言えばあまりに美しくて壊すに忍びなく、食べるのをためらってしまうところでしょうか。

ヴァンサン・ヴァレ氏の細やかな仕事が細部に至るまで発揮された美しい1枚。開けた瞬間の驚きと感動もさることながら、フレッシュで豊かな味わいをひとつひとつ確かめながら頂く至福の時間。とても素敵なチョコレートでした。