マルゥ/ミルクチョコレート48%

チョコレビュー

ベトナムのビーントゥーバー「マルゥ(MAROU)」。ベトナムで出会った二人のフランス人、大手広告代理店のキャリアを持つヴィンセント・モロー氏と、銀行員のサミュエル・マルタ氏が、ベトナム産カカオの素晴らしさ惚れ込み、2011年に創業したチョコレート・メーカーです。

マルゥで作られるチョコレートはすべてベトナム産カカオを使用。6つの地域で収穫されたカカオときび砂糖のみというシンプルな材料により、地域ごとに異なるカカオの奥深さを味わうことが出来ます。

さて、今日の1枚はマルゥ初のミルクチョコレート。ココナツミルクを使ったものは以前からありましたが、いったいどのようなチョコレートになったのでしょうか。期待に胸を膨らませ頂きます。

ミルクチョコレート48%

オリエンタルなマルゥらしい意匠はそのまま、これまでのシックなラインと異なる白基調の明るいパッケージ。金地のロゴがキラキラと光ります。

表の包み紙をほどくと、ロゴの封がされた金紙に包まれたチョコレート。割れを防ぐために厚紙が一緒に封入されていました。

それもそのはず、この薄さ。厚い部分でも3ミリ程度、モールドの溝の部分に至っては2ミリあるかないかといったところでしょうか。かなり堅い厚紙が添えられていたにもかかわらず、開封時点で薄い部分が何か所か割れていました。

贈り物でしたら、あらあら…となってしまうところかもしれませんが、食べてびっくり。そんな気持ちが吹き飛びます。

なにより特筆すべきはそのテクスチャ。舌にのせた途端にとろりと流れ、濃厚な旨みが一瞬で躍り出ます。微かにサラサラとした粒子を感じますが、言われなければ気づかぬほど。驚くべき滑らかさであっという間に流動化します。極薄に作られたのがこのためであったなら、少々の割れなど問題にするはずもありません。素晴らしいテクスチャです。

フレーバーとしてまず感じるのは苦み走った焦がしキャラメル、焼きバナナの甘みとエスプレッソ。クリームブリュレが焼きあがった瞬間のほろ苦さとバターの風味。

しかし、この力強いカカオ感はなんとしたことでしょう。カカオ分48%とあったのでミルクの甘みが強い穏やかなチョコレートを想像していましたが、え?48%でしたっけ?と思わずパッケージの表記を確認したほど。ダイナミックで躍動感ある、まるで60~65%のハイカカオミルクの味わい。

シングルオリジンであればカカオ産地を記載するマルゥ。表記にカカオ産地が書かれていないことを考慮するとブレンドでしょうか?非常にバランスよくキャラメルやはちみつのような甘みがあります。

ベトナム産カカオは甘酸っぱく瑞々しい果実味の強さが特徴的ですが、ミルクが入ることで酸味が和らぎ、おそらく乳由来であろう濃厚な旨みが加わって、これまで出ていたココナツミルクのチョコレートのようなこっくりとした甘みとは異なる、ヴィエノワズリのような香ばしさとふくらみを持った味わいに変化したように感じました。

しかし、マルゥには毎回驚かされます。初めて出会ったのは2016年のサロン・デュ・ショコラ東京でしたが、当時はあまりに強い酸味に「酸っぱ!」という感想でしたが、手に取るたび新たな魅力を持ったチョコレートに出会う嬉しさは格別。進化し続けるマルゥ。今では文句なしにお勧めしたいチョコレートの一つです。