浪漫須貯古齢糖/ハート(心臓)のチョコレート

チョコレビュー

大正時代から残る古い洋館がいくつも並ぶ、大正浪漫の香りが漂う町、青森県弘前市。そこに、自家焙煎カカオを使用したクラフトチョコレート工房兼店舗を構えるのが浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)です。

オーナー、須藤銀雅さんの紹介にこんな気になる1文がありました。

2016年、東京都中野区に一般販売無しでオーセンティックバーにしか販売しない「BAR専用チョコレート」の工房「アトリエAirgead」を開業。
チョコレートやアルコールのもつ香気成分に着目し、食材の組み合わせやフードペアリングを研究しながら日夜新しいレシピを開発している。

-浪漫須貯古齢糖HPより

「BAR専用チョコレート」。自家焙煎カカオでチョコレートを作る、いわゆるBean to Bar スタイルのお店は、どちらかと言えば単一カカオの可能性を追う傾向がありますが、ペアリングに注目している点に興味を持ち少々面白いチョコレートを選んでみました。

なんとなくタイトルでお察しかと思いますが、衝撃的なヴィジュアルなので、その手のものが苦手な方はスルーをお願いします。

ちゃんと、言いましたからね?行きますよ?

ハート(心臓)のチョコレート

あははははは。心臓を半分にかたどった巨大なチョコレートがどーん。注文した際にわかっていましたが、実物のインパクトはそれを上回ります。

なんといってもサイズ感が超リアル。お店のデータでは「縦11cm×横8cm×高さ4cm程度」。重さははかってみたところ145g。

ヒトの心臓の大きさには個人差がありますが、平均的には人のこぶし大で200~300gと言いますから半分だとまさに実物大。

もう、食べる前から変な笑いが出てきます…が、チョコレートは食べてこそ!頂きます。

切ってみるとやわらかめのガナッシュとコンフィチュールがどろり。うぅ、心臓に包丁を入れる時、なんかとてもヤバいことをしている気持ちになりますね。

巨大なボンボンショコラ(?)は、マダガスカル産カカオのチョコレートのシェル(型)に、3層仕立てのガナッシュが入っていて、チョコケーキというべきものかもしれません。

以下に構成を記します。

1・ハーブやスパイスを効かせたアモンティリャード(シェリー酒)のガナシュ
2・苺とバルサミコ酢の濃厚なコンフィチュール
3・イチジク、ココナツピューレのプチプチ食感にクリームシェリーで香り付けしたガナシュ

-浪漫須貯古齢糖HPより

いやぁ、すごく凝っていますが、この大きさだからできることかもしれませんね。お酒を効かせたガナッシュが畳みかけてくる構成。

見た目に気持ちを持っていかれがちですが、このガナッシュが実に素晴らしい。

シェルはフルーティーなマダガスカル産カカオ。レーズンや熟したりんごのような華やかさの中に落ち着きのある香りが美しい。

そこから現れる最初のガナッシュは、ちょっと一言では言えないボタニカルな味わい。霧靄にけぶるガス灯の灯りを思わせます。

更にバルサミコ酢の効いた苺のコンフィチュールが、鮮やかな甘い調べとなって登場し、間髪入れずプチプチとしたイチジクの食感が楽しいガナッシュが訪れる。

そして、最後にココナツのサクサクした食感と、夏の夜の調べが余韻として響く、香りの交雑が実に美しい贅沢なチョコレート・デザートというべき一品。

特にこのチョコレートの多くを占める、アモンティリャードガナッシュの神秘的ともいえるアロマは、華やかさと揺らぎを漂わせる大正浪漫の世界に一瞬で誘うようでした。

見た目にひるまず是非食べてみて!と言いたくなる、素晴らしいチョコレートでした!!

おまけ。

変わったもの大好きなおっとが、「それは絶対バットに置いて撮るべき!」といって聞かなかったので、その写真も載せておきますね。

なまなましいよ!!

※この記事は2020年に執筆したレビューのリライトです。