健康志向もあるのでしょうか。砂糖の含有量を控えたハイカカオのチョコレートの人気が高まり、最近はカカオ分60%を超えるチョコレートがスーパーに並ぶようにもなってきました。
しかしカカオ分が高まるとやはり好みは分かれるもの。今回はブリュッセルで購入した”上級者向け”というべき砂糖を抜いたタブレットのご紹介です。
マダガスカル カカオ 100%

チョコレートを作る上で、最もシンプルな材料は、カカオマス、カカオバター、砂糖。しかし、これはなんと砂糖すら除いた100%ピュアカカオ(カカオマス+カカオバター)のチョコレート。甘みがまったくないため、ともすれば土?と困惑しかねない、食べる人を選ぶチョコレートです。
「Plantaition Ambolikapiky」とある通り、ベースとなるカカオはマダガスカル産のアンボリカピキィ農園のもの。同じくアンボリカピキィでカカオ分72%のチョコレートが出ていますが、そちらはマダガスカル産カカオらしくラズベリーの様な果実味を感じましたが、甘みを一切省いたお味はどんなものでしょう?

赤みを帯びつつもかなり落ち着いたトーンの葡萄色。巨峰のような黒っぽい葡萄がもつ、やや渋みを伴った深みのある甘い香りが鼻をくすぐります。
舌に乗せるとするりと溶けるブノワ・ニアンらしい繊細なテクスチャ。しかし、いつも感じる甘酸っぱい果実味ではなく、例えるなら葡萄の皮のような酸味と渋みがダイレクトにやってきます。土じゃなくてほっとしましたが、これはこれは…。
戸惑いながらもじっくりと、香りを確かめるように味わうと、グロゼイユのようなキュッとした酸味から、次第にホエー(ヨーグルトの上澄み)のように変化していきました。更にローストアーモンドの皮ような香ばしさとバターが訪れ、ああ、紛れもなくあのアンボリカピキィを思いだすではありませんか。
舌が慣れてからは、はっきりとカカオ本来の風味を感じましたが、たどり着くまでのハードルが高い、まさに上級者向け。カカオを学ぶにはもってこいですが、一般的なチョコレートの認識で「美味しい」と感じるには砂糖の力も必要なのですね。カカオの深淵にまた一歩近づいた気持ちです。
※この記事は2018年に執筆したレビューのリライトです。