チョコレートで巡るベルギーの旅◆ブノワ・ニアン(イクセル店)

ショコラトリーのこと

ベルギーのワロン地方、リエージュに本店を構える「ブノワ・ニアン(Benoit Nihant)」。思えば私がベルギーまで飛んだのは、こちらでどうしても入手したいチョコレートがあったからでした。

まず訪れたのはブリュッセルの中心部から少し離れた、アールヌーボー建築が立ち並ぶイクセル地区(Ixelles)の支店。ワーテルロー通りとダンボッシュ通りの交わる角地にあります。

シックなブラックのファサードに刻まれた「CACAOFÈVIER(カカオフェビエ)」の文字。チョコレートの世界からカカオに魅せられ、ショコラティエである以上にカカオ職人でありたい、というブノワ・ニアン氏の矜持が刻まれています。

元はエンジニアという異例の経歴を持つブノワ・ニアン氏。サロン・デュ・ショコラのトークショーで「エンジニアの時は結構な高給取りだったんだ。それからガレージでチョコレートを作り出したら3年お金が入ってこなかったね!」と笑って話していたのが印象的でした。さぞ優秀だったんでしょうね。

チョコレートを作るために必要な機械は中古のものを買い、自ら改良したとのこと。カカオの力強さ、香りの多彩さにすっかり魅了され、ここのチョコレートだけは毎年必ず買っています。

さて、イクセル店の店内ですがご覧の通り、日本にはまだ入ってこないオランジェットやシトロネットなど目にするものすべてに心が躍りますが、なんといっても種類豊富なタブレットが並んだ光景に心から感動。ベルギーに飛んでよかった!本当に良かった!!

ボンボンももちろん美味しいのですが、カカオ豆のローストから一貫してチョコレートを作る Bean to Bar のショコラトリーらしくタブレットが秀逸。

自ら農園に足を運んで選んだカカオは、ローストやコンチング時間を細かく変え、それぞれの持ち味を最も活かした形でタブレットに変貌し、カカオとはこれほどまでに豊かなフレーバーを持つのか、と驚かされます。

但し、問題となるのは原材料となるカカオ豆の調達。政情不安な国では、安定した生産量が確保できなかったり、政府の意向で一方的に契約更新を打ち切られるなど様々な苦労があると先のセミナーで伺いました。

10周年記念に出されたラジェド・ド・オウロや、カカオ分100%など、いくつかのタブレットを見繕った後、旅の途中のおやつ用に4つほどボンボンを選んで箱に入れてもらいました。ずらっと並ぶ中から好きなチョコを選んで買うのは楽しいですね。厚手の紙箱でギフトにも十分な仕様。

こちらがその4つ。ゲントのホテルに着いてからゆっくり頂きました。ピスタチオは豆感強めのマジパン。アマンドプラリネはカリカリと香ばしく、クヤグアのガナッシュは綺麗なくちどけ。そしてタイム&オレンジなど強いフレーバーにも負けない力強いカカオの香り。良いですねぇ。フレッシュでとてもおいしい。

チョコ仲間と一緒にサロン・デュ・ショコラでセミナーを聞いていた時には、まさかチョコレートのためにベルギーまで行くなんて想像もしませんでしたが、このチョコレートのために日本から来た、と拙い英語で告げたらスタッフの方が驚き、ものすごく喜んでくれました。

私が世界一おいしいと思うショコラトリー「ブノワ・ニアン」。ええ、もう誰がなんと言おうと、私にとっては世界一。こちらのチョコレートに出会わなければベルギーを旅することもなかったのですから。

そして、この半年後の9月。またもベルギーを再訪することになります。そう、次はリエージュにある本店を目指したのです。

※この記事は2018年に執筆したもののリライトとなります。